上野動物園で越冬したムジセッカ
都市公園には思わぬ珍鳥が飛来することがあります。
2012年の1月から4月にかけて、上野公園の動物園内の池の植え込みでムジセッカが越冬しました。関東におけるムジセッカの記録は増加傾向にありますが、上野公園のような大都市の緑地での記録はほとんどこれまでにないと思われます。
本来は、水辺のアシ原と灌木の混じったような環境を好む種ですが、この個体は、池の周りに植えられたツツジの植え込みを灌木に、また、ハスをアシと見立てているようでした。行動範囲は池の縁の50mほどと非常に狭かったです。しかし、渡去が近づくと、ボート池の柳の木の上で複雑な節回しでさえずるなど、行動範囲を広げていました。
餌はもっぱらユスリカの成虫に依存しており、蚊柱の中でホバリングする様子も観察されました。
周辺ではウグイスやメジロも越冬していましたが、あまり互いに干渉することはありませんでした。しかし、この年はキマユムシクイも公園内で越冬しており、キマユムシクイが縄張り内に侵入すると、攻撃して追い払おうとする行動が見られました。
このムジセッカは4月25日頃まで滞在しましたが、翌年以降は姿を見せませんでした。